そこら辺にある邪悪

どうやら頓着が無い故、気付いてすらいなかったらしいんだ。

人が人を繋ぐ理由なんて、案外簡単で単純であったりして、簡単に裏切っていたり

俺は目を瞑るのではなく、目にさえ入れてなかったらしい、そこら辺の邪悪。

脳内で勤しむくらいは誰でもするだろうけど、隔たりがあるらしい。


薄皮一枚剥ぐでもなく、手にした刃物で簡単に叶えてしまえるから

そこに至る過程がどうあろうと、帰結するのは変わらないと、

まるで肝試しでもするかのように、簡単に陥れると、誰かが言った。


信心深くはないけれど、信じているのは言霊やら生霊やら、人の思いに直結した、それら

だから込める事にしている。

成る可く丁寧に塗り込もうとしている。


君がそれに触れた気がして、そのいつかの君を夢にみたりするけれど

君が君に唱えている、復活の呪文とか、失われた何かとか

きっと大事にしていた筈で、俺も牧歌的にそれを信じていたんだ。


君の中にある、その刹那的で横暴な瞬間からも目を背けていない、つもりでいた。

いつからか、それに悲鳴を上げたのは、俺か、君かももうよくわからなくなった。

嬉しそうに、傷付いているか、を確認する君の目に、光が灯らなくなっていく、と

まるで追い縋っていた俺を満足そうに見つめるので

なんかもう、それが面倒になってしまいそうで。


写し鏡なのかね、君の中にあるものも。

何も望んでいない、なんて空虚な理想すら並べ立てることもないので

君の邪悪だって、本当はそこら辺にあるのと変わらない。凡庸なんだよ。

俺の欲も、君の邪悪も、同じくらいに凡庸で。


だから少しだけ、上向いた理想で生きようよ、なんて柄にもなく呟いたりもする。

つまらない俺も、度し難い君も、傷の深さに貴賎なんてないから。

俺は君を見つめているだけで居られないけど、それでも君の思想を大事にはしたいんだ。

望むように居られるかわからないけれど。

磨り減った俺を、君はどんな目で見つめるのかは知らないよ。


君がその凡庸を受け入れて、君が君のまま、意思を持ってそうしたらいい。

どちらにせよ、受け入れるから。


空に向けて吐いた息の白さに、君を想う。

月の見えない夜にも、輝いている星を想う。

とても遠い場所に想う。

君を想う。


どうか、これ以上君を磨り減らさないで欲しい。

君が君である為に、君が君を生きる為に。


どうとでも暮らせる俺のことはどうでもいいよ。

いつか、で構わないから。


君の目に輝きが戻るまで、待つから

君は君を見捨てないで居て欲しい。

あとは、割とどうでもいい。


話すの辛いならそれでもいいよ。

寄り添えないなら言葉だけでいい。


手を望むならそれで、悪態ならそれで

どうにかして癒せるように。

君のたましいが、そこにあるなら、それ以外なんてどうだっていいんだ。


冷たい手のひらを重ねたら、温められるのだろうか。

そんな簡単でありふれた凡庸で、いつか癒せたらいいのになって

そんな程度のありふれた欲で。

君を想う事にした。